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貴方の眠るこの街に
脚を踏み入れることすら憚れて
記憶の奥底の片隅に追いやり
涙すら忘却の彼方へ廃棄する
雑踏と言う名の深海に
身を潜めても
心癒される訳もなく
狂おしく掻き乱される情動を
沈黙で噛み殺すのみ
突然奪われたあの笑顔と温もりが
この胸に還ってくるのなら
この世に生まれ堕ちた意味も
納得出来るのに
恋なのか愛なのか
区別も決着も必要なくて
心に宿る仄かな灯火だけを
真実と選択していたなら
亡骸すら抱けなかった
虚しさと後悔らに
あの頃の僕らの
くだらないだけのプライドを
嘲笑われる事も無かっただろう
あの日
貴方の大きな背中を
強く掴んで離さなければ
貴方はこの地に眠る事も
無かったかもしれない
あと何年
貴方の居ない時間を
生き刻まなければ
いけないのだろうか?
あと何年
僕の人格荒廃が
免れるのだろうか?
張りつめた夜明け近くの
神戸の街の片隅で
あと何年
揺れるロウソクの焔を
見つめ涙を零せば
背中に重くのし懸かる
この十字架から
解放されるのだろうか?
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